「失敗はしませんでした――厳密にいえばですね――しかし、仕事は非常に不完全で、まずい仕上げでした」ナドレックは弁解した。
そのあいだ、地球人の心は、パレイン人が地球人のはげしい赤面に相当する態度を示したのを強く感じた。「この問題に関するわたしの報告は、レンズマン秘に編入されるべきものです」

「しかし、きみは何をしたのです?」ふたりの地球人は同時にたずねた。

「こんな拙劣な結果をどう報告したらいいか、わからないほどです」そしてナドレックは実際に身もだえした。「わたしの羞恥を記録テープに残すことを許してはくれないでしょうね?」
 ふたりは許すわけにいかなかったので、その旨を告げた。

「あなたがたがそうする必要があるのなら、わたしは譲歩します。

わたしの計画は、日本人を相互に抹殺させようというものでした。

これは理論的には妥当で単純でしたが、実行のほうは、はなはだしく不完全でした。
わたしの仕事が非常に不手ぎわだったので、三つの省庁の事務次官がひとりずつ生き残り、わたしはみずから粗雑な実力を行使して、その三人を殺さねばなりませんでした。
わたしはこの仕事の仕上げの不完全さを、はなはだ遺憾に思い、それを深く謝罪します。わたしは、あなたがたがこの報告を、公表しないようにするものと信じます」
パレイン人は心理的に汗を流し、まことにはずかしそうに弁解したのち、通信を切った。

 ヘインズとキニスンはしばらくのあいだ、唖然として顔を見あわせていた。空港司令官が最初に沈黙を破った。
「いやはや――なんたる――ことだ!」彼はやっと、しぼりだすようにいうと、戦術タンクをびっしり満たしている無数の光点に手を振った。「大艦隊の全力をもってしてもできんことを、彼はひとりでやってのけた。
しかも、まるで教室のすみに立たされるか、夕食抜きでベッドに追いやられるかするのが当然だとでもいうように、謝罪しておるのだ!」