ソウゴは眉を寄せた或人にすこし困ったように笑ってから、廊下に足を付けた。事前に戦兎と会っていた(※ハードルが地に落ちていたともいう)ソウゴとは違い、或人からすれば全てが初めてなのだ。
パーソナルスペースは大事にしなければ。安っぽい物だが、落下防止の手すりがあってよかった。これで物理的な距離が取れる……。
と、そんなことをソウゴと名乗った少年が考えているとは露知らず。
或人はまだ公式発表はおろか、極一部しか知らない『ゼロワン』をただの少年が『知っている』ことに不信感を滲ませていた。

「俺も仮面ライダーなんだよね!」

まぁ、とびっきりの爆弾がその直後に降ってきて、跡形もなく消し去っていったのだが。

「……え?」
「か・め・ん・ライダー! 一緒でしょ? だからさ、或人と話しに来たってわけ」
「……君が、仮面ライダー……? 飛電ドライバーは社長じゃないと使えねぇはずじゃ」
「へぇ! そっちのはそうなんだ?」

ソウゴはどこからか、液晶画面の付いた白い珍妙な機械と、手のひらに収まるほどの丸い物体を差し出した。或人は2つとも素直に受けとる。どちらも初めて触るものだ。見た目よりズッシリ感はない。
――あ。この丸いやつがどっちかにはまる……のか?

「それが俺のドライバーね。全然違うでしょ?」
「マジで? へぇオレのと――って、えぇ!? 渡しちゃダメだろこんな」
「えー?」

大事なもの、と言いたかった。

「預かってた方が無力化できて怖くないでしょ?」