逃げる人々とは逆の方向を走りながら現場に到着した2人は、暴走したヒューマギアによる惨状に立ち尽くした。

「って、数がっ……!」
「多いね」

しかもタチが悪いことに、善良なヒューマギアが異常機を確保しようと果敢に近づくおかげで、負のループが完成している。――主犯となるマギアもいないのに、これか。ソウゴは視線を鋭くする。
ざっと数えたときでさえ30人のお仕事ヒューマギアがいたのだ。ぐずぐずしていると奥からコック型だの清掃員型だの更に出てくるだろう。被害が拡大することは明白だった。
或人がゼロワンドライバーを取り出した――そのとき。

「或人様!」
「イズ……!」
「所要のため、近くに。或人『社長』、忘れたのですか」

忘れたのか。正体がバレてはならない。感情のない瞳が訴える。ここは人が多すぎる。或人は奥歯をすり潰さんとするほどの力を込めたが、こんなことをしたって状況は変わらない。

「――っ、ソウゴ! とりあえず隠れろ!」
「何言ってるの。俺、仮面ライダーだよ?」

兄弟の戦いに手を出さないという誓約はある。――が、或人は変身するために手順を踏まなければならない。ここで動けるのはソウゴだけだ。それなら緊急事態だろう。……多分。きっと。
ここで民を――ヒューマギアの被害も。見過ごせるほど、ソウゴは機械仕掛けをただの物品とは見れないのだ。

イズに連れられて後方に隠れる或人を横目で見送って、ソウゴはドライバーを装着する。

「みんな。力を貸して」
『グランドジオウ!』