まず最初に寺山氏が挙げた「ジャック・ロンドンの小説」とは『一切れのビフテキ』だろう。
これは彼が>>861で挙げた「不自然にネタを求める」手法が祟って療養中に執筆した作品で
かつては犬にビフテキをやってたようなプロボクサーが加齢と共に落ちぶれ
痩せこけて、試合に負けて「せめて前みたいにちゃんと食肉してればなぁ…」と嘆くお話。
これで人生を決める寺山氏の人格形成は、さぞ過酷だったのだろうと思う。
餓えていては怒れる若者たちにすらなれない、という調子は
アメリカのブコウスキーが働かない金持ちの子息どもを詩人として認めなかったことを思い出させる。
まぁ寺山氏は自分の子供にオルフェンズなんて見せないだろうね、悪意しかない嘘っぱちは心に毒だってこと。

 ぶっちゃけ、他の用例はまるで知らない。
ただ、寺山氏が言葉を大切にしていたことはよく伝わってくる。
この人は喋りたがりじゃなくて、比喩としての歴史も半分くらいは伝えたいと思っていて
人間同士のシンパシーを重んじ、現状(1977年当時)を憂いていたのだろう。
携帯がない時代でさえそうなんだから、よっぽどだね。