>自分の強みをしっかりと見つめ、そこを磨き続けていきたいです
顔芸ですね・・うんざり

公式練習でも、表現力は出色だった。指が、見えない線を宙に描き、その場の情感を高める。
きつく束ねていないため、髪は乱れたが、むしろ切なさを増した。
上半身と下半身が違う動きをすることでなまめかしく、切なげな表情を浮かべたあと、力強く躍動した。
「知子ちゃん、大きく、それ!」
濱田コーチの声に、宮原は手を大きく広げた。一つ一つの動作で、音の渦を作った。こだわりがあるのだろう。
最後までリンクに残り、丁寧に滑りを確認。製氷スタッフが入ってくると、リンクの中央に戻り、誰もいないスタンドに頭を下げた。

そして本番、彼女は"らしさ"を見せている。
鍛錬された滑りは、観客を引き込む力がある。演技構成点は、世界女王アリーナ・ザギトワに次ぐ2番目に高い点数だった。シーズン序盤にしては、決して悪くない。
昨年の全日本選手権でも、スケート技術、要素のつなぎ、演技、構成、音楽の解釈の全5項目でトップだったが、美しさは健在だ。
「体は動いているし、前に進んでいる手応えはあります」
そう語る宮原も、好感触を得た様子だった。

一方で、ジャンプは課題を残した。冒頭にアクセルは入らず、3回転フリップでは転倒。
3連続ジャンプでは観衆の拍手を誘ったが、3回転ルッツ+2回転トーループ、3回転サルコウはGOE(出来栄え点)でマイナス点がついた。
技術点ではザギトワ、紀平梨花、アレクサンドラ・トゥルソワなど世界トップに引き離されることになった。
会見では、ロシアの15歳、トゥルソワが4回転を4本も入れたことで、話題もその方向へ飛んだ。

――4回転ジャンプ時代に入ったが、どう向き合うべきか?
記者に問われた宮原は答えた。
「そんなすぐに4回転は跳べないので......。トゥルソワ選手には4回転が強みだと思いますが。自分の強みをしっかりと見つめ、そこを磨き続けていきたいです」
ジレンマはあるだろう。ジャンパーたちがフィギュアスケートの在り方までも変えようとしている。しかし、彼女は彼女のやり方で前へ進む。

つづく