つづき

この物語の主人公、実は目が見えていない。
となるとあの犬は、盲導犬だったらしい。

これを知ると物語は、はぐれた犬の追いかけっこから、ライフラインを突如奪われた闇を手探りに探索するドキドキに変わっていく。
何気なく聞いていた犬を呼ぶ声が、切実なものに変わってくるから、あら不思議。

こうして見ていくと女の子は、木の棒の感覚、触覚。パンの匂い、排気ガスの匂い、香水の匂い、嗅覚。足音、鳴き声、聴覚。雨の感じ。風。
と、五感全体を通して世界を見つめている、他の感覚が視聴者にとって視覚として翻訳されていく映像の魔力、みたいなそういう作りになっているのがわかる。

盲目なのに気づかなかった、自分は、この作品を見る視聴者としてかなり失格なわけなのだけど。
それでも必要以上にハンディキャップを強調しない、健やかなトーンに、なんだか安心するような作者の厳しい優しさを感じてしまい、これを変えろとはとても言えない。

また、見えないものを見ていくその世界の捉え方は、常に景色を見ていて通り過ぎていく、自分のような健常者ゆえの慣れ、というかマンネリみたいなものを、つっついていく。
世界とはこんなに豊かなのだ、と盲目の視点を通して伝えられていく。その不思議。

なんだろうね。
作品の観方というか、どこまでさり気ない伏線に気付けるか、みたいな、興味関心をもって作品に臨めるか、みたいな。
そういうのによって、見え方って変わるよね? って話。
この作品の知識を貰ったのは、他の方の紹介文だったりして、海外の作品をこうして伝えてくれる名前も知らぬ彼らに感謝。
そして、自分はひたすら盲目。

自分の前のレビューはこの作品の魅力の十分の一も伝えられてないよねー。
レビューのあり方に、見方を提示して、他の読者にそれを伝える。複数の見方が出来てラッキー。みたいなのがあって。
そういうレビューにも憧れるのだけど。ひたすら平均的というか、その中でも底辺の自分にはムリポなのです。