★白鵬 執念の全勝ターン・不利な体勢でも慌てず反撃
これが横綱の懐の深さか。「対応力がすごい。後ろに回られても絶対に白星を諦めない。15日間、この集中力を保てれば誰もかなわない」。土俵下にいた阿武松審判長(元関脇益荒雄)をうならせた。折り返しの8日目。白鵬が執念で全勝ターンを決めた。速
さと身のこなしの柔らかさを発揮した取り口だった。立ち合いから栃煌山にうまくいなされ、完全に相手に背を向けた。万事休すか。でも、白鵬は慌てない。「冷静に体勢を立て直して、振り返ってみた感じ」。相手が体を寄せきれないというわずかな隙を
逃さなかった。一瞬の判断でくるっと体を回して組み直し、すかさず左から投げを打つ。土俵にたたきつけた。不利な体勢からでも反撃できるのは、日頃の準備のたまものだろう。日々の稽古で後ろ向きのすり足を繰り返していた。「毎日自分の型にはなれ
ない。型を持って型にこだわらず。困った時に対応できるように」初日から8連勝は47回目で、自身が持つ中日給金の最多記録(1場所15日制が定着した1949年夏場所以降)を更新。そのうち32回で優勝している。八角理事長(元横綱北勝海)は「負けなかっ
たことが大きい。後から考えたら、この一番勝って良かったと思うんじゃないかな」と話す。中日での勝ちっ放しも、ただ一人。「気持ちいいもんだよね。また引っ張っていくだけ」。平成最後の幕内優勝に向け、残り7日間に向かう。(甲斐弘史)

◆全敗だった3人 明暗
◯錦木 ◯魁聖 ●正代
前日まで全敗の3人は明暗を分けた。錦木は「たかが1勝なのに(記者が)いっぱい来た」と自虐を交え、「ここから8連勝を目指す」と威勢良し。同じく初白星の魁聖は「錦木が勝ったから勝たなきゃと思った」と触発されたそう。取組後に支度部屋のテレビ
で正代の負け越しを見届けると、「正代は残っちゃった」と笑った。最後に土俵に上がった正代は「(2人の勝利は)気にしてなかったけど・・・」とがっかり。