浮かべば則ち又た取りて之を投ず。此くの如くすること三たび。其の卒に曰く、汝は天下の國士なり。
汝を幸して以て而の名を成さしめんと。要離死せざるを得て、呉に歸る。呉王大いに説び、與に國を分かたんことを請う。
要離曰く、不可なり。臣請う必ず死せんと。
呉王之を止む。
要離曰く、夫れ妻子を殺し、之を焚きて其の灰を揚ぐるは、事に便とするを以てなるも、臣は以て不仁と為す。
夫れ故主の為に新主を殺すは、臣以て不義と為す。夫れ卒まれて江に浮かび、三たび入りて出づ。
特だ王子慶忌之が賜を為して殺さざるのみ。臣已に辱と為す。夫れ不仁不義、又且つ已に辱めらる。以て生く可からざるなりと。
呉王止むること能わず、果たして剣に伏して死せり。要離は賞の為に動かされずと謂う可し。
故に大利に臨んで其の義を易えず、廉なりと謂う可し。廉なるが故に貴富を以てして其の辱を忘れざるなり。