次の朝になって、男は、娘が旅立っていくのかなと思っていたら、そんな気配はこれっぽっちもなくて、はきそうじにふきそうじ。洗濯(せんたく)に破(やぶ)れた着物のつくろいと、休む暇(ひま)も無いほど、くるくると働いてくれるのだと。そうやって、もう一晩泊まり、また一晩泊まりしたと。


 「お前、いく晩泊まっても旅立つふうでもないが、どういうつもりだ」
 「あい、お前はかかも無いげだが、おらをお前のかかにしてもらいたいが、どうだろう」
 「か、かか……にか」
 「あい」
 「かか…かぁ。おらとこは見たとおり、何にも無い貧乏者だ。ありがたいけど、かかにはできん」
 「なんでぇ」
 「お、お前みてぇないとしげな娘がおらのかかなんて、に、似(に)合わねぇ」
 「そんげなことは無(ね)ぇ、かかにして呉(く)れぇ」
 「ほ、ほんとにいいのか」
 「あい」
 「そうせば、かかになってくれや」
 こうして二人は夫婦(めおと)になったと。そして、そのうちに男の子が生まれた。