むかし、あったけど。
 狢(むじな)と狐(きつね)が、道でばったり会ったと。
 「狐どん、狐どん、ひさしぶりじゃのう」
 「これはこれは狢どん。本当にひさしぶりじゃ」
というているうちに、狐が、
 「どうじゃ、狢どん。二人で化けくらべをしまいか」
というと、狢も、
 「それはおもしろい。ひとつ、化けくらべをするか」
というた。それで、まずはじめに、狐がお宮さんの前で化けて見せることになった。

 しばらくして、狢が約束のお宮さんの前に行くと、道の真中(まんなか)に、うまそうなまんじゅうが落ちている。
<これはうまそうなまんじゅうじゃわい>
と思うて、あたりをキョロキョロ見回し、誰(だれ)もいないと分かると、まんじゅうをさっと拾って、パクリと口の中に入れた。