>>310 >>311呉王は王子慶忌を殺したいと思っていたが、これを殺せる者がいなくて、呉王は悩んでいた。
要離は言った。私はこれをできますと。
私はかつて六馬でこれを江上に追ったが駄目だった。多くの矢を射たが当たらなかった。
今、お前が剣を抜いても肘より上げることはできず、馬車の横木に登ることもできない。お前にどうやってできるというのだ。
要離は言った。私は期待を裏切ることを憂いていますが、できないことを憂いてはいません。
王の指示があれば、私はやってみせますと。呉王は言った。分かったと。
翌日、要離に罪を加え、妻子を捕らえ、これを焼いてその灰を捨てた。要離は逃げて、王子慶忌に衛で会った。
王子慶忌は喜んで言った。呉王の無道は、貴方の見るところで、諸侯の知るところである。
今、貴方が罪に落とされて去ったのは良い機会だと。
要離はしばらくして、王子慶忌に言った。呉の無道ははなはだ酷い。王子とこの国を奪いに行きましょうと。王子慶忌は言った。そうしようと。
そして、要離と共に長江を渡る。中程で、剣を抜いて王子慶忌を刺した。王子慶忌は要離を掴んで、長江に投げた。
浮かんでくれば、また掴んで投げた。このようにすること三回。そして、言った。お前はは天下の国士だ。
お前を生かして名を成さしめようと。要離は死なずに、呉に帰った。呉王は大いに喜んで、共に国を分けようと言った。
要離は言った。駄目です。私は必ず死ななければなりません。呉王はこれを止めた。
要離は言った。私は妻子を殺し、これを焼いてその灰を捨てました。目的のためとはいえ、不仁となります。
私は旧主である呉王のために新主である王子慶忌を殺し、不義となります。
私は掴まれて長江に浮かび、三回入水し出水しました。ただ王子慶忌の温情で殺されなかっただけなのです。
私は既に屈辱を受けています。これは不仁不義です。またこれも屈辱です。だから、生きていてはいけないのですと。
呉王は止めることができず、要離は剣に伏して死んだ。要離は恩賞のために動いたのではない。
大きな目的のために信念を変えず、清廉であり、清廉であるために、富貴になることで、その屈辱を忘れることはなかった。