■より運転しやすくなった221系

 新快速は停車駅が少なく、また117系は最高時速が115kmまで出せる性能を持っていることから、運転に工夫ができるのも腕の見せどころだった。
 「ここの踏切を時速何kmで通過すれば、その先のカーブをスムーズに曲がれる、といった具合です。加速やブレーキの操作をなるべく減らすことができれば、乗り心地がよくなり、お客様にも快適に乗車していただけます。見方を変えれば、私がラクをしているだけに見えてしまうのですが(笑)」
 後藤さんが運転士となって数年後、221系が登場した。
 「制御方式はあまり変わっていませんが、最高速度が時速120kmになったほか、ブレーキの方式が変わったことで反応がとてもよくなり、さらに運転がしやすくなりました」

 221系と言えば乗客や鉄道ファンにとっては大きな窓が特徴だが、運転するうえではあまり変化はなかったという。
 「乗務員室越しに前面の風景を楽しむお客様もおられましたが、運転中はつねに四方八方に気を配っているため、気になることはありませんでした。下り列車で西日がきつい夏の日に、『ちょっと暑いかな』と思うくらいでしたね」
 阪神淡路大震災が発生した1995年には、223系が新快速に投入される。車体が軽いステンレス製となり、小型軽量化されたモーターやVVVFインバーター制御方式を採用するなど、221系から大きく変化した。
 「車両が軽く、モーターのトルクも大きいため、加速がとてもよいです。とくに、時速80kmくらいからの伸びはすごいです。最高速度が時速130kmとさらに速くなったため、所要時間も短くなりましたが、スピードに慣れるまではちょっと疲れを感じるときもありました」
 自動車で高速道路を走っていると、スピードを上げるにつれて緊張感などで疲れがたまるが、それと同じなのだろう。