■後進の指導に注力

 その後、姫路列車区で乗務する傍ら、指導運転士として新人運転士の育成を担当。自身は気動車の乗務資格を取得したものの、その直後に内勤へ異動となり、以降は後進の指導に当たることとなる。
 「訓練センターで指導などに当たった後、大阪府吹田市にある当社の動力車操縦者養成所、つまり鉄道の運転免許を取得するための教習所で、教師を3年間務めました。ここでは、ベースとなる車両を例にした一般的な運転方法に加え、運転するうえで必要な法規や安全に関する事柄を教えます」
 「私が免許を取得した時代は、ペーパー教材がメインのいわゆる“詰め込み教育”でしたが、現在はシミュレーターやコンピューターを活用し、異常が発生した際の対応能力を向上させるためのトレーニングなども取り入れています」
 このトレーニングは「Think-and-Act Training」と呼ばれ、マニュアルやチェックリストでは対応できない緊急事態が起こった際、ほかの社員などと連携・協力し、情報収集や対応ができる力をつけるためのものである。航空業界などで取り入れられているCRM(Crew Resource Management)訓練の鉄道版で、当時としては先進的な取り組みだ。