事件現場近くに集まる消防隊員と捜査員ら=川崎市多摩区で2019年5月28日午前9時47分、梅村直承撮影
 これに対し、ツイッター上では、「きれい事にうんざり」といった声や、「被害者や家族がそれを聞いてどう思うのか」「犯人に同情は無用だ」という批判が殺到した。また、「言いたいことは分かるがこのタイミングで言うべきではない」という意見も多くあった。一方で、「大切な問題提起。被害者のサポートと両立する問題」「今後こういう犯罪を防ぐためには、
見捨てられた思いにさせない社会の厚みが必要なのか。怒りにまかせた切り捨てるだけの自分の言葉を反省した」と理解を示す声もあった。
 藤田さんは毎日新聞の取材に対し、「無差別殺傷事件が起こるたびに、『一人で死ね』という言説が繰り返されることにずっと違和感を覚えてきた」と明かす。代表理事を務める「ほっとプラス」は、さいたま市を拠点に年間約500件の生活相談を受ける。長時間労働でうつになって退職しネットカフェで暮らす若者や、生活保護を受けたものの「国の世話になるのが申し訳ない」といって自殺した高齢者もいた。

 「普段から関わっている人たちの中には、貧困や社会への不満を抱えながらやっと生きている人たちがいる。そういう人たちが憎悪を増幅させて事件の当事者になるかもしれないという思いを常に持っている」と藤田さんは語る。その上で「今回の発言は、遺族に向けた言葉ではない。社会に絶望して次の凶行に及ぶ人が少しでも減るようにしたいという思いからだ」と話す。
小田嶋隆さん「(発言は)殺人犯の擁護ではない」
 コラムニストの小田嶋隆さんは、藤田さんの発言とそれに対する批判を踏まえ、ツイッターでこうつぶやいた。「(藤田さんの発言は)殺人犯を擁護したのではない。『死にたいなら一人で死ね』というその言葉が、不安定な感情をかかえた人々への呪いの言葉となることを憂慮したから、彼はそれを言ったのだ」
 小田嶋さんは取材に、「発言を批判する人には、容疑者を罵倒することと被害者に寄り添うことが同じだという思い込みがあるのではないか。怒りに水を差されることが許せず、罵倒に参加するのか、それとも加害者にくみするのか、という2区分法で語られている」と指摘。「『罪のない人を巻き込むな』という心情は至極まっとうだ。ただ、
皆がその思いを言葉にして言説が大きくなれば、別のメッセージになってしまう。容疑者が死亡し、怒りの持って行き場がなく言葉が強くなっているように感じる」と語る。