記者会見での失言や失敗はあまたありますが、一生懸命に回答しているのに批判を浴びるというのがこれまでよくある事例でした。今回の質問に向き合わない、という態度は、私もなんと表現したらよいか言葉を失うほどです。
公表しなかっただけでなく、公表しなかった理由について「文書を読み上げている態度」がいかにも不誠実です。このような時には公表しなかったことを「率直に反省する言葉」で回答する必要がありました。

 2回目の会見での着目点は、1年前の調査委員会の委員長による会見内容です。記者からは「弁護士として不十分だと思わなかったのか」といった質問が何度もなされました。調査委員会という名称でありながら、弁護士は関電から提供された資料、情報の範囲内でコメントするだけだったことが露呈されており、弁護士の評判を落とすことになったように見えます。

ダメージコントロールとして記者会見を機能させる

 危機発生時の記者会見の役割は、ダメージを最小限にすることです。1回目、2回目の記者会見は、時間も長く、やればやるほどダメージを深めていきました。ただやっただけで、何のための会見か、何を守る会見か、何を伝える会見か、どのダメージを軽減させるものなのか、まったく不明。危機管理広報の視点が抜けており、「説明しただけ」の会見でした。
説明責任を果たすことを完全にはき違えていたようです。危機時には情報の小出しは絶対にやってはいけないのが鉄則です。よい情報は小出しにして期待感を持たせて盛り上げていくのですが、危機時には全く逆の発想でダメージを最小限に抑えることが信頼回復の第一歩として重要です。

 プロの視点からすると、最初の9月27日の記者会見を11時に設定したことが不思議に見えました。夕方に設定する選択肢もあったはずだからです。夕方にすれば、半日時間を作ることができ、1年前の調査書の配布、第三者委員会による再検証の方向性、第三者委員会報告書が出た段階で責任の取り方を決断する、といったメッセージ設計にすることができたと思うからです
。少なくとも私ならそうします。そうすれば、ダメージコントロールとして記者会見が機能して、1回の会見で済ませることができたでしょう。記者会見の時間設定は広報担当者の責任分担です。広報室が危機管理としての役割を果たしていなかったのではないでしょうか。