■私の老母は毎日テレビを見ながら「死ぬ」と言って家に閉じこもった

 ただでさえ経済が疲弊している北海道では知事が全国に先駆けて非常事態宣言を出した。鈴木直道知事の英断という声が強いが、私からすれば自殺行為である。私が子供のころ(30年前)、北海道の人口は約560万人だった。それが現在では約525万人にまで減少した。一方札幌市は約170万人だったのが約195万人を超え、地価は上昇を続けている。
要するに極端な道都一極集中が起こっているのだが、その肝心の札幌の歓楽街から灯が消え、同市に住む私の老母は毎日テレビを見ながら「死ぬ」と言って家に閉じこもっているそうだ。札幌経済の死は北海道の死である。鈴木知事は北海道を縮小させたいのだろうか。なぜ経済を縮小させる人間を称賛するのか意味が分からない。

 こういう時、老人層に「冷静になって数字をよく見てみよ。がんや脳卒中や心筋梗塞の方が怖かろう。なんなら交通事故死の方が遥かに多かろう」と言っても何の意味もないのである。
「第二次世界大戦の敗北は軍事力の敗北であった以上に、私たち文化力の敗退であった」(意訳)とは、角川源義による名文であったが、これに当てはめると今次コロナ禍に付随するあらゆる過度なパニックと流言飛語とデマは、私たち日本の文化力、教育力、科学的思考力、理論的思考力すべての敗北である。

 私たち日本人は戦後、いったい何を学び、何を教えられてきたのか。すべてが無駄であったとは思いたくないが、まるですべてが無駄のように思えてくる。