ある哲人は言う。「現在だけが唯一の真実で、また現実なのだ。したがって現在は事実に満たされている時であり、私達の存在は現在の中に限定されている。・・・・そして全ての人は必ず死ぬ」
 人は未来に夢を託して生きる、過去の栄光に生きるなどということもあるが、生きているのは、現在、それも今のこの瞬間にしかすぎない。
 身近な生き物に目を向けて見よ。蟻を見よ。陽が昇ると、誰に命令されるでもなく陽が落ちるまで、自分よりはるかに大きな獲物を運び続ける。それも仲間と争うことなく、協力さえしている姿をしばしば見ることができる。蜂もしかり。害虫と称する虫たちもひたすら、餌を求め続け子孫を残している。彼らも生きている。人も生きている。彼らのひたむきさだけを見れば怠け者の人間が彼らを下等と笑うことはできまい。