「これで、喜んでもらえるかな…」

風澄徹は覚束ない足取りで帰路を歩く。
日は登り始め、既にその光が大地を照らしていた。
腕にはフロンティアSに似つかわしくない色紙とリボンで包まれた箱が一つ、大事そうに抱えられている。

「……あれ…?」

ふと、視界が揺らぐ。そのまま視界には地面が迫ってきた。
まず疑ったのは次元の揺らぎによる地震。
次に、なんらかの襲撃で麻酔銃か何かを撃たれたか。
どちらにしても、猶予はない。

「倒れてる暇は、ないんだ…」

必死に手を伸ばすも、力を入れて掴めたのは砂利程度。
すぐに崩れ落ち、徹は意識を手離した…。


ぽたり、と水滴が顔に落ちてきた。
雨に降られては折角買ったものが濡れてしまう。
まだ頭に重さが残っているのもお構いなしに、気力で意識を取り戻す。

…すぐに見えたのは、竜胆しづねの顔だった。
涙と鼻水でくしゃくしゃになっている。
不謹慎だが、それを美しいと思った。

「よ、よかった…生きてた…」

感極まったのか、徹の胸に顔を押しつけわんわんと泣き出す。
恥も見聞も知らず声をあげて泣くしづねに徹はただ呆気に取られていた。