少し前に新人が来た。名前は綾小路咲良。
どうも『良いところ』のお嬢様らしく、立ち振舞いから使ってる装備まで立派なものだと感心した。
聞けば半分冗談半分家出みたいな調子でここ、治安維持組織アウローラに転がり込んできたとの事。
何でも、差別する世界を正す為に警備の仕事に着きたいと申し出たのだとか。
そういった心意気は良いことだ、と天王寺セイラは深く考えずに捉えていた。
ただ、ここはフロンティアSだ。
ある程度のことは覚悟してきているのだろうが、危険がつきまとうことに変わりはない。
そういった面で、先輩であるセイラは無防備に見える彼女のサポートをしてやろうと思っていた。
そう、思っていた、のだが。

「司様、お茶を煎れましたよ」
「咲良君か、すまないな」
「いえいえそれほどでもー」
「…茶を煎れてくれるのはありがたいのだが」
「なんでしょう?あ、お茶菓子ですね。今日は」
「はいはーい、訓練に戻りましょうねー」
「あぁん、まだクッキー渡せてないのにぃー…」

なんというか、この調子である。
入隊してまだ日の短い彼女には教えなければいけないことが山とある。