バレンヌ帝国歴代皇帝の多くは、皇帝すら操る謎の人物の好き嫌いによって謀殺され、その後釜には謎の人物が願ったものが据えられることが多かったといわれている。
また、ひとつの目的を果たすためだけに皇帝に据えられ、その目的を達成すると同時に用済みになった皇帝は人知れず戦死という形で葬られていたともいわれている。
当然の事ながらこの謀殺の影にも謎の人物の姿が見え隠れしている。
さらに、謎の人物は時として己さえ意図せぬ形で皇帝を死地に追いやり、その命を散らせることもあったという。
この謎の人物こそが真に新皇帝が『先帝の無念を晴らす!』べき相手なのだが、決してそれが実現することはない。
なぜなら新皇帝もまた、謎の人物の操り人形に過ぎないからである。

民明書房刊『バレンヌ帝国秘史〜ルドンに送られた皇帝たち〜』より抜粋