日米開戦の人種的側面 アメリカの反省1944 [単行本]
カレイ マックウィリアムス (著), Carey McWilliams (原著), 渡辺 惣樹 (翻訳)
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 本書は現在進行形(当時)の記録にとどまりません。同じく敵国となったドイツ系、イタリア系には
及ぶことのなかった苛酷な取り扱いの背景として、一九〇〇年前後からカリフォルニアで激しくなった
反日本人の動きを取り上げ、カリフォルニアと日本のあいだで起きていたこの局地的な戦争≠ェ、
しだいに国家間の戦いへと拡大していく経緯を冷静な筆致で跡づけています。驚くべきは本書が
太平洋戦争のさなかに書かれたことでしょう。戦後日本では、太平洋戦争の起源を内向きに捉えて
反省材料にするといった傾向が強く、相手国たる米国の事情は看過されがちでした。人種問題という
悪質な、そして双方の外交努力をもってしても克服し得なかった問題を米側が抱えていたと指摘する
本書は、日米開戦史の見方を一変させるほどのインパクトを持つ重要史料といえます。

 〇誰が反日本人≠煽ったか

 このように本書の真価は、カリフォルニアにおける日本人排斥が日米開戦へといたる歴史が
たどられているところ(1章、2章、7章)にあります。大統領ですら抑え込むことができなかった
日本人排斥の急先鋒となったのはカリフォルニアのアイルランド系移民です。日本人に仕事の場を
奪われることへの恐怖、日本が日露戦争に勝利したのみならず憎しみの対象だった英国と同盟関係を
結んだことからくる敵意がその背景にあります。これに労働組合、農民共済組織、新聞メディア
(特にハースト系新聞)、政治家が加わります。黒人問題を抱える南部諸州の政治家、WASPの
優生学論者もカリフォルニアの動きを後押しします。日本の軍部がカリフォルニアの日本人排斥を
利用して強硬路線に転じたのは確かだが、しかし日本の軍部とて無から有を生みだしたわけではなく、
原因を作ったのはあくまでもカリフォルニアであるとマックウィリアムス氏は断じています。
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