(・・・って言うことが、あったんだ、昨日の夜に)
(そうなんか、そいつ、お化けか何か?)
(ううん。生身の人間)
(それで?どうなった?)
(その子は警告を無視して近づいて来て)
(撃ったんか?)
(撃てなかった。威嚇射撃すら出来なかった。人間が人間を撃つって、難しいんだ。第2次大戦中の米兵のほとんどは、空に向けて弾を撃ってたんだよ)
(それでそれで?)
(そいつはヘラヘラ笑いながら、ゾンビみたいに近づいてきて、気が付いたら一瞬で投げ技をかけられて、雪の上に倒されてた)
(何なんだソイツ?)
(演習の一環だったんだ。女子生徒に見えたのは、ウチらの制服を着た教官)
(口頭での警告までは合格。その後の、威嚇射撃、制圧射撃が不合格)
(でも、ホントにお前が撃っちゃったらアブないじゃん。死ぬじゃん、その教官)
(もう1つ不合格があった。私が渡された小銃は、ある部品が作動しないようになっていた。
 2発目以降の弾が出ないようにね。それを、受領の際に、気づかなければいけなかった)