【 海保:マタニティー服が「制服」ではない理由 】
2018年05月06日 16:02 毎日新聞

写真海上保安庁の記者会見で、中島敏・長官の横でマタニティー服を着用した人事課企画係の鳴海真代さん(左)=東京都千代田区の同庁で2018年4月18日、米田堅持撮影
海上保安庁の記者会見で、中島敏・長官の横でマタニティー服を着用した人事課企画係の鳴海真代さん(左)=東京都千代田区の同庁で2018年4月18日、米田堅持撮影

 海上保安庁は、今年度から妊娠中の女性職員が着用するためのマタニティー服を導入した。一見すると職員が普段着用している制服とよく似たデザインだが、正式な制服ではない。
制服っぽいマタニティー服ができた裏には、新たな取り組みならではの苦労があった。【米田堅持】

特殊被服として実現

 2016年4月、海保の「女性活躍・ワークライフバランス推進本部」(本部長・花角英世次長)の事務局長になった人事課人事企画調整官(当時)の蓮見由絵さん(45)は、新たな制服としてマタニティー服を作ろうとした。
けがや妊娠などの場合を除き原則、制服の着用義務がある地方の海上保安部で私服で勤務していると外来者から職員だと認識されず、業務に支障が生じることがあったからで、上層部の反応も前向きだった。

 しかし、海保の制服は、海上保安官の身分を示すため規定が厳しく定められ、追加や変更の手続きは厳格さが求められる。また制服が導入されたら、着用が義務化されるだけでなく、着用の仕方に細かいルールを定められ、
妊婦自身の体調や事情に合わせて柔軟に運用するのが難しくなる。このためマタニティー服は、「特殊被服」という作業時に制服の上に着用する作業外衣と同じ扱いとすることで、ようやく実現することになった。

 マタニティー服が導入されるまでは、私服で勤務をしたり、一回り大きな男物の制服を借りたりするケースがあったという。導入に関する女性職員対象のアンケートで、
圧倒的に賛同が多かったものの職員の93%が男性という職場環境もあり「女性優遇という批判が出るのではないか」という懸念の声もあったという。