【軍事ワールド】ステルス機F−35をつかさどる「気難しいアリス」

2019.5.28 06:30
 航空自衛隊三沢基地(青森県)の最新鋭ステルス戦闘機F−35Aが4月9日に青森県沖合の洋上で墜落してから1カ月以上が経過した。
同機は米国を中心に9カ国による共同開発で多くの国が採用しているため、墜落原因に注目が集まっているが、不明のままだ。
ただ、墜落原因以上に海外で問題視されているのが、F−35の運用に欠かせないプログラム「アリス」の不具合だ。(岡田敏彦)

飛行停止をめぐって

 F−35は新鋭機としては極めて事故が少ない機体だが、ゼロというわけではない。
2010年には操縦士(パイロット)が気を失い墜落する事案が発生。
調査の結果、酸素供給装置の不具合だったことが判明しており、2018年までに少なくとも29件の低酸素症の事例があったという。

 また最近では昨年9月、海兵隊向けの短距離離陸・垂直着陸が可能なF−35Bが米国内で墜落した。
この際は米軍がF−35を採用する全ての国、軍に飛行停止措置を連絡。
調査の結果、エンジン内部の燃料管に製造過程での欠陥がみつかり、同じタイプの燃料管を組み込んでいた117機全てで交換した後、飛行を再開している。

 しかし今回の自衛隊所属機の事故後も、米軍ではF−35の飛行停止措置を行っていない。
英国も今月21日、空軍第617飛行隊のF−35Aを初の海外遠征訓練に送り出している。
行き先はギリシャのアクロティリ基地で、その移動距離を考慮すれば、機体に故障の不安を感じていないのは明らかだ。

問題は日本固有?

 墜落した空自のF−35Aは、部品を輸入し日本で最終組み立てを行った「初の国内組み立て」の機体で、日本で組み立て後は米国側の検査を受け、その後米本国まで運び、さらに検査を受けるという徹底した品質管理を受けていた。
一方で冷却系統や航法装置の不具合で2度、予定外の着陸を行っている。
米英など外国で飛行停止措置を取らないのは、こうした海外勢が、事故原因を、「日本特有の何か」だと判断している可能性は否定できない。