【社説】トランプ氏の恩赦、法律より政治優先
保守派による法の軽視は正当化できない――反移民強硬派の元保安官を赦免で

 アルパイオ氏は不法移民に対する強硬なスタイルと戦術によって、大勢の保守派からヒーロー扱いされた。攻撃的に法を執行したせいで訴訟が起こされ、裁判所の差し止め命令が下された。
その頂点をなすのが先月、法廷侮辱罪で有罪判決を受けたことだ。
トランプ氏はアルパイオ氏の長きにわたる公職のキャリアを称賛したが、保安官が守ると誓った法律を無視したことは、それで正当化されるわけではない。

 右派の友人の一部が言うには、リベラル派のトランプ氏批判勢力は、エリック・ホルダー元司法長官やロイス・ラーナー内国歳入庁(IRS)幹部に対する議会侮辱罪での召喚を、政治的だとはねつけても平気だった。
また、左派は軍事機密情報を漏えいさせたブラッドリー・マニング元上等兵の減刑を支持していた。
 以上のことは全て事実であり、それは軽蔑すべきことだが、だからといって、いつからリベラル派の偽善が、保守派の法律軽視を正当化するようになったのだろうか。
トランプ氏はバラク・オバマ前大統領を見習うのではなく、より優れた基準を打ち立てようとしているはずだが、二極化した政治は、政策合意や政治的支持が全てを正当化する間違った場所へと米国を導いていく。
あなたはあなたの側の法律違反者を許し、われわれはわれわれの側の法律違反者を許すというふうに。
 トランプ氏はこの恩赦が支持者を活気づけると期待しているだろうが、同時に共和党を分裂させることにもなる。アルパイオ氏の攻撃的な戦術は、侮辱罪で召喚される前からすでに支持を失っていた。
昨年11月の保安官選挙では13ポイント差で落選している。また、連邦判事を見下すようなトランプ氏の態度は、今後数年間にトランプ氏の政策決定への判断を示すことになる裁判官と良好な関係を築くのにはマイナスだ。
アルパイオ氏の恩赦は、極めて政治色が強い今の時代を象徴する憂うつなサインだ。

http://jp.wsj.com/articles/SB10159573888762483534004583359243912850464

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