実は「儲かる」中国のサイバー統制——政治的安定とは別のもう一つの理由

「サイバーセキュリティ法」の導入に、ネット規制を回避するソフトウェアVPNの規制強化。
SNSでの書き込みの実名登録化など、中国のサイバー統制が目立っている。
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VPNへの規制強化と併せ、10月に開かれる中国共産党第19回党大会を前に、安定を揺るがす「芽」を摘み取るのが目的だろう。
しかし、狙いはそれだけではない。
アリババと騰訊控股(テンセント)の2社の株価時価総額が40兆円を超え、
世界の「トップ5」入りも近いというニュースを知れば、国内産業の保護育成という経済的利益こそが、隠れた狙いなのではないかと思えてくる。

Google撤退などで急成長した中国企業

規制が経済実利につながった例の一つがGoogleである。
2006年に中国市場に参入した同社は一時、中国で30%を超えるシェアを獲得した。
当初は、中国政府が要求した新疆、チベット、民主化運動などの情報規制をのんでいたが、
アメリカで「検閲容認だ」との批判を浴びたため、2010年、中国から撤退した。
日本メディアは中国の情報統制を非難したが、その陰で急成長したのが、
中国発の検索サイト「百度(バイドゥ)」と中国版Twitter「微博(ウェイボー)」、それに中国版ラインの「微信(WeChat)」などのネット企業だった。
百度は、検索サイト市場ではGoogleに次いで世界2位に成長。
微信は、スマホ決済など電子商取引をはじめ飛行機、鉄道の予約、流行のモバイク(乗り捨て自由のシェア自転車)使用に必需なアプリ。
中国ではいまや微信なしに日常生活はできない。
Googleの例は、アメリカのネット企業が中国市場で自由に競争すれば、未熟な中国企業が成長できなくなるため、
国内産業を保護、育成する狙いがあったことをうかがわせる。

「スノーデン効果」もあった。米国家安全保障局(NSA)の元職員・エドワード・スノーデン氏は2013年6月、
「NSAは中国本土も含め世界中でハッキングを行っている」と暴露。
中国当局はこれを契機に米IT企業への締め付けを開始した。
中国政府は企業に国産通信機器を使うように要求し、米ネットワーク機器企業の中国での受注は激減するのである。


https://www.businessinsider.jp/post-102970