17 - 衆 - 内閣委員会 - 3号 昭和28年11月06日
○辻政信委員 私は休会中二週間の予定で李承晩ラインと竹島を見て参りました。
それは内閣委員といたしまして、海上保安庁の機構と運営について、はたして適当であるかどうかということを
検討するのがおもな使命でありました。この間山口長官初め首脳部の皆様及び現地で勤務しておる
船長以下に非常なごやつかいになりましたことを、あらためてお礼を申し上げます。
その視察の結果に基いて、二、三保安庁長官に質疑をいたしたいと思いますが、
その第一は私が現場へ行つて感に打たれたことが一つあります。
それは船長と船員というものが、相手の大砲や機関銃の前に、まる腰でもつて捨身で働いておるという点であります。
過去の戦争で海軍の駆逐艦が敵のはげしい爆撃下に行動した、それに便乗したことがありますけれども、
それに劣らないような気持でもつてやつておられた。
しかもその船長や船員は、うちを出るときに遺書を残し、家族と水杯をもつてわかれて来ておる。
三交代で一週間連続服務しまして、一航海終ると、体重が一貫目ぐらい減つて来る、こういう状態であります。
私は船長以下のその活動に対して、百パーセントの敬意を表する。
しかるに九月の七日から逮捕が始まつて、一箇月のうちに四十一ぱいの漁船が拿捕されておるにかかわらず、
海上保安庁の本部において、課長以上の主任者がだれ一人として現場を見ておらないという点であります。
たいへん失礼でありますが、首脳部の人たちが消極的である。極端にいえば無責任である。
第一線は命がけである。そこにこの問題の本質がある。
何がゆえに今日まで首脳部がみずから現場に乗り出して、危険を共にしながらその船長以下の死を決したような
行動に対して激励をし、適切な指導をしなかつたか、その点について長官の所信を承りたい。


旧陸軍参謀が海軍を批判するような口調