抗争を膨らませ過ぎてまさかの二部構成化。

――伊勢型戦艦(前編)――

当時の艦政本部で流行語大賞があったとしたら「扶桑はヤバい」が優勝だったであろう。
設計の拙さにより、主砲口径の差を持ってしても米ワイオミング型にすら勝てるか怪しい出来であり、
まして米国は既に4隻の36cm砲艦の建造を決定、帝国海軍の焦りは非常に大きかった。
更に言えば、同盟国の指導も受けられず巨艦建造技術が確立する前から、
前級よりはるかに大きい世界最大級の巨艦建造に踏み切った当然の帰結として、
造船所からは多種多様の問題が報告されており、そのヤバい性能の発揮すら不安視されていたのだが
そこは二の次にされていた辺り、当時の帝国海軍の雰囲気が伺える。

しかも上層部からは「もっと強い戦艦を作れ!」一点張りであり、小手先の変更では追い付かなくなりつつあった。
いっそ英国に戦艦を作ってもらえば、という提案も当然上がっていたが
なまじ既に世界最大級の戦艦を起工した実績?もあり、また海軍外からも「戦艦は国内で!」と言う声が強かったと言う。
そんな状況で出てきた案だったが、実現すれば起死回生の一手となり得るものであった。

伊勢型戦艦1914計画案
常備排水量29,500t 船体202×28.7m
最大速力 22.5kt 40,000HP 直結タービン2基4軸 混焼缶24基
42口径38.1cm砲 連装 4基(毘式38.1cm連装砲)
45口径15.2cm砲 単装20基
53,3cm魚雷発射管 単装 6基
舷側 127−305mm、砲塔305mm

扶桑型からの経験により漸く背負い式配置の設計もモノになりつつあったが、
それを抜きにしても、砲数確保のための漫然な武装配置による脆弱な防御では頑健な米戦艦に勝つのは難しい。
そこで英国で現在建造中である最新鋭の38cm砲戦艦、これに採用されている主砲を購入し搭載する事で
砲塔数を減らしつつ効率の良い武装配置を実現し、米戦艦を超越しようと言うのだ
34.3cm砲を購入してそう間も無い話であるが、
国内生産が実現せず買い切り止まりだったからこそなし得る決断であったとも言える。