【道具がなくても】

以前、特別警備隊(以下、特警隊)の写真を伊藤さんに見せて貰って、不思議に思ったことがあった。
ミリオタのサイトなどで紹介されている特警隊のフル装備は、特殊部隊という一種独特の不気味さが漂っていて、ミリオタでない私ですらゾクゾクした。
あの装備こそが特警隊の証であるように思っていたのに、写真で見た、実際の特警隊の方達の装備は各自ばらばらで、ネットで見た特警隊の装備や、雑誌や映画でみる特殊部隊の装備とも全然違って、驚くほど軽装だったからだ。
中でも取り分けラフな姿なのが、伊藤さんだった。
夏目 「なんで伊藤さん、フル装備じゃないんですか?」
伊藤 「必要ないから。」
夏目 「必要ないって……『 特警隊の装備 』とか、ファンのサイトとかで紹介されてるあの装備って、特警隊の為の特警隊仕様の装備なんじゃないんですか?よく見たら皆さん装備ばらばらですね。」
伊藤 「道具ってのは、壊れる前提だしな。
みんなばらばらなのは、そもそも死に装束なんだから、好きな格好したいだろ。
真面目に言えば、性格や体型や身体操作の癖も違うし、なによりドクトリン(得意技)が各人違うんだから同じ格好の訳がないよ。
軽装については、米軍じゃあるまいし、そんなに怪我したくないんだったら、仕事変えろってことだよ。
もちろん無傷は目指すし、大切な特殊技能者だから、人命は尊重するけど、怪我を恐れるがあまり重装備になって、任務達成に支障が起きるようじゃ本末転倒だ。
高い技能を持つ者は、必ずスピードを発揮する、となれば自然に軽装になっていくよ。」
なるほどな!確かに。
特殊部隊というのは、独りで海や山に入って、装備が壊れても、助けが来なくても、任務を遂行しなくてはならないのだから、肉体や能力は、野生動物なみなんだろうと思う。
野生の哺乳類は、牙と爪と、せいぜい角くらいで、厳しい自然界を天敵と戦いながら生きている。