>>431
見舞い客も途絶えて久しい病室に、少年は居た。
言葉を発する者は無く、只呼吸をするだけの音が、空虚に漂い続ける。
「……ねえ、アスカ」
何十分そうして立ち尽くしていただろうか。目の前の少女は、誰も、何も見ては居らず、呼び掛けても応えはしない。
「ねえ、アスカ!」
少年は恐ろしかったのだ。家族が。友人が。己自身さえもが。
或いは友人と呼べる者など、そもそも居なかったのやも知れぬ。

そうだ。友人は、お前が殺したじゃないか。

その声は無機質に告げるようでもあり、ねめつくような悪意と嘲笑を以て揶揄するようでもあり。
いつまでも少年を責め続けていた。

「怖いんだよ! 助けてよアスカ!」
必死に少女を揺り起こさんと呼び掛ける様は、慟哭そのものであった。
「何とか言ってよ!」
その時である。
病室の窓際にいつの間にか鎮座している白いペットボトルに気付いたのだ。

……それから先は、記す事さえ憚られる有様であった。