昨年12月、日本を代表するグローバル企業ブリヂストンが、自動車エンジンの一部を扱う「防振ゴム事業」を中国の自動車部品会社に今夏中にも売却する予定だというニュースが世間を騒がせた。
このように企業買収などを経て、中国資本に売られる「日の丸ブランド」は数多くある。
2011年には、大手電機メーカーNECが「LAVIE」ブランドで知られるパソコン事業を中国レノボとの合弁会社に移管。同じく「FMV」で知られる富士通も、パソコン事業を手がけていた100%子会社を、社名はそのままでレノボとの合弁会社に移行した(2018年)。
白物家電も同様で、東芝は白物家電事業を中国メーカー「美的集団」に売却している(2016年)。
NECはレノボと合弁事業化した理由について、「当社単独で継続的な事業成長を実現していくことは困難と判断し、レノボの資材調達力を組み合わせることでさらなる事業成長を図るため」(広報室)と回答。
富士通は「富士通のグローバルな販売力や開発力などにレノボの世界屈指の調達力を合わせれば、成功モデルを達成できると考えた」(広報IR室)と回答し、
東芝は事業を売却した理由について、「東芝単独で経営資源を投入して、競争力をもって成長し続けられるかを検討した結果、パートナーが必要だと考えた。事業移管によって必要な成長投資もでき、黒字化も果たしている」(広報部)と回答した。
こうした傾向は、コロナ以降も続いている。出資先の中国関連会社や、中国で展開する自社子会社の中国企業への売却も増えている。背景に、製造拠点である中国で人件費が上昇してコストが掛かり、子会社を手放さざるを得なくなったという事情もあるようだ。
元内閣官房参与で『日本を喰う中国』(ワニブックスPLUS新書)を上梓した京都大学大学院教授の藤井聡氏は、次のように警鐘を鳴らす。
「個々の企業に事情があるのはよく分かりますが、日本企業の固有の技術は、日本の競争力の源泉です。これが企業買収により中国に流出することは、問題と言わざるを得ません。
さらに、日本企業の中国子会社であれば技術が流出する懸念はありませんが、オーナーが中国企業になれば、技術が流出する可能性があることは否定できません。日本政府が買収されないよう保護すべきです」