2024年の日本各地の観光地がコロナ禍明けと円安によるインバウンド需要で活況を呈する中、韓国に最も近い対馬はその恩恵に与れていない。

5年前の最盛期の4分の1に…長崎県・対馬が抱える「韓国人観光客が消えたジレンマ」
FRIDAY 3/5(火) 8:00配信

韓国・釜山からわずか49.5㎞の距離に位置する長崎県下の対馬島は、「朝鮮半島に一番近い国境の島」である。

昨年2月、新型コロナウイルスの感染拡大により停止していた釜山―比田勝(ひたかつ)港の国際フェリー運航が3年ぶりに再開され、1年が経過した。

対馬市によれば、フェリー再開後に対馬を訪れた韓国人は約10万4000人(昨年11月末時点)。
コロナ下ではほぼゼロだったことを考えれば大幅に回復したとの見方もできるが、最盛期の約41万人(’18年)には、遠く及ばない。

「活気が少し戻っているのは、島北部の比田勝港周辺だけです」
そう語るのは、長年にわたり対馬を取材する、報道写真家の山本皓一氏だ。

「対馬の中心部は南部の対馬市厳原町(いづはらまち)ですが、かつて国際フェリーが乗り入れていた厳原港はいま工事中で、韓国人が直接乗り入れる
ことができない。
比田勝港から距離にして80㎞、車で往復5時間近くかかる厳原を訪れる観光客は少なく、経済的な恩恵を受けられるのは比田勝にとどまっているのです」

今冬、山本氏は釜山から対馬行きのフェリーに乗船。「コロナ前」との変化を如実に痛感したという。

「予約を取るのも大変だったフェリーは空席が目立ち、町に人がいない。かつて観光客で賑わっていた厳原の食堂、ホテルの多くが閉業していた。
島内の郵便局の看板からは、ハングル表記が取り去られていました」(山本氏)

観光名所だった対馬北端の展望台「韓国展望所」を訪れたが、老朽化による改修のため人影はなかった。

大型免税店「ICHIRAKU」に至っては、コロナ禍を経て閉店どころか更地になっていた――。(続く)