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 一方、不登校やいじめなどをきっかけに、教育格差が生まれることもある。
「どうにかなると思っていた」けれど
「いま考えれば、人生につまずいたのは10歳のときです」
 関西地方に住む内田隆男さん(仮名=36)は、小学5年から中学3年まで不登校だった。その経験により、社会に対する不安や恐怖を植えつけられ、その感覚がぬぐい去れない。

 学校は、学力を身につけるだけの場所ではない。
問題が起きたとき、誰かに頼るべく「つながる能力」や、「解決を目指す意欲」を培い、社会性を育む場所でもある。

そこでの挫折体験が尾を引いて、他人や社会との関わりを遠ざけるようになり、のちの人生に長く影響することが少なくない。内田さんもそのひとりだ。
 小学4年までは「勉強ができるキャラ」で、テストは100点を取るのが当たり前。勉強が嫌いではないものの、父親に点数が悪いと怒られるため、それが嫌でテスト勉強に励んだ。
父親は母方の祖父母と不仲で、怒鳴りちらしていた。
「僕が勉強を頑張れば、どうにかなると思っていた」
 しかし、5年生のときにエネルギーが切れ、中3まで不登校になる。両親はケンカばかり。そんな親と一緒にいたくないため、ただ眠ることでやり過ごした。
保健室登校をすることはあったが、「何もしなくていい」と言われていたのに、課題を与えられるのが嫌だった。
 だが不登校でも、学習塾には通うことができた。
「やさしく、勉強もスポーツもできる塾の先生を見て、そうなりたいと思い、勉強は頑張りました」
 そのかいあってか、無事、高校へ進学を果たす。
「楽しい場所という感覚はないが、1度休んだらまた通えなくなるのではないかという強迫観念もあって、高校では皆勤賞でした。勉強が嫌いではないですからね。むしろ、したかった」
 中学時代とは違い、高校も大学も行き渋ることはほとんどなかった。周囲から見れば、不登校の問題から脱し、社会的な関わりができるように見えたことだろう。しかし、就職活動はほとんどせず、いまに至る。
事実上、ひきこもり状態に