佐賀で障害持つ息子亡くす 両親「家族の宝」

毎日新聞2018年7月14日 21時58分(最終更新 7月14日 22時05分)

 「生きて帰ってほしかった」。西日本を襲った豪雨で犠牲となった佐賀県伊万里市の山口恭平さん(20)は、
利用していた障害者通所施設の近くの川に流され、2日後、下流の海岸で発見された。
重い自閉症で、水が大好きだった恭平さん。
大雨の中、川を見に行こうとして濁流にのみ込まれたとみられる。
両親は「家族の宝だった」と声を震わせた。

 両親によると、恭平さんは言葉をうまく話せず、落ち着きがなかった。
増水した川に流されたのは6日午後。
通っていた「椿(つばき)作業所」で帰る準備をしていた際、
職員が目を離したわずかな間に行方が分からなくなった。

 日ごろから水が好きで、豪雨当日も何度も作業所の近くの川を見に行こうとしていたという。
家族も職員も無事を祈ったが翌日、周囲の音を遮断するためにいつも耳に付けていた「トレードマーク」の黄色い耳当てが下流で発見され、
8日に約6キロ離れた長崎県松浦市の海岸で遺体が見つかった。きれいな顔で戻ってきてくれた息子に両親は声も出ず、涙に暮れた。

 苦労もあったが、その分、いつも母親(48)のそばに寄ってくる「可愛くて可愛くて仕方ない」存在だった。
母親は、生後間もない時期から中学3年までの記録を1冊のノートにつづっていた。
歯磨きができるようになったこと。声が出せたこと。小学校6年の文化祭で絵描き歌を披露してどよめきが起きたこと−−。
ノートには、小さな成長とその時に感じた幸せがぎっしり詰まっている。

 父親(51)は「小学生になって、『恭平です』としゃべれるようになった時は涙が出るほどうれしかった」と振り返る。
周囲には何でもないように見えることも、家族みんなで喜んだ。
素直で表情豊かな姿に癒やされ、兄を含めた家族4人の生活は笑顔であふれていた。

 自宅の居間には、恭平さんが好んだ怪獣の人形やDVD、絵本が並ぶ。
父親は「階段をタンタン上って、トンチンカンなことばかり言って。
恭平がいた時はにぎやかだった」と静まり返った自宅にうつむく。
「恭平苦しかったよね。びっくりしたよね。
守ってあげられなくてごめんね。もう会えないなんて信じたくないよ」。母親は涙をにじませ、写真の中の恭平さんの顔を指でなでた。【池田美欧】

https://mainichi.jp/articles/20180715/k00/00m/040/110000c



母親が溺愛していたパターンか。口に咥えているのは、歯ブラシかな?
水が好きで川に行くなら、施設を休んだらいいのに。