季刊福祉労働160号
末永弘
「解約申入れ書」が届く
先日、物件の契約者となっている自立生活センターグッドライフ宛に、不動産屋から一通の「解約申入れ書」が届きました。
「貴殿に賃貸しております下記建物につきまして、平成二十八年七月二十 六日に締結致しました契約書の条項に規定する義務に違反する行為が明らかになり、
その義務の履行 がなされておらず、本契約を継続することが困難と認められるに至りましたので、
本契約を解除させて頂きたくここにご通知申し上げます。(中略)ご近隣の方々が恐怖や不安の日々を送らざるを得な いことを考えますと、
これ以上住み続けて頂くことは貸主の責任上出来かねます。何とぞご理解を賜 りたくよろしくお願い申し上げます」。事前に不動産屋の担当者から連絡は受けていたとはいえ、「近隣の方々が.........」という一文も含め、実際に文書で受け取るとこの現実はやはり重い。

 この物件は東京都内の一軒家で、それまで住んでいたアパートを退去するように大家さんから求められていた自閉症のYさん
(重度訪問介護を毎日二四時間利用して生活している)が転居するために、二年前にグッドライフが名義人となって借りたものです。
以前のアパートでは、壁を叩く、大声を出す、 隣の方への暴言などが原因で退去を求められたため、
転居先として二階建て3DKの一軒家というかなり条件の良い物件を借りることにしました。
住み始める前に、隣や向かいのお宅を私とYさんの父親で訪問し、自閉症という障害のあるYさんが二四時間介護者付きで生活するので、
誰かに危害を加えるような心配はないと思いますが、壁を叩いたり大声を出したりという形で時々ご迷惑をおかけす ることがあると思うので、
酷いときにはご連絡ください、と名刺を渡してご挨拶してありました。
約一年後に少し離れた近所の方から大家さんに「時々大声が聞こえるが、どういう人が住んでいるのか?」という連絡があった際には、
不動産屋の担当者にも同行してもらう形で周辺十数軒のお宅へ事情を説明していました。
Yさんの状態が悪くなってきたときには、精神科の病院に二、三カ月入院し (二年間で二回入院)少し立て直すようにしていたことや、
一番迷惑をかけていたと思われるお隣の方が自閉症という障害のことを何とか理解しようとして下さっていたこともあり、二年近くの間は大きな苦情がなく過ごしてきました。