私はこれからの日本に大して希望を
つなぐことができない。
このまま行つたら「日本」はなくなつて
しまうのではないかといふ感を日ましに
深くする。
日本はなくなつて、その代はりに、
無機的な、からつぽな、ニュートラルな、
中間色の、富裕な、抜目がない、
或る経済的大国が極東の一角に
残るのであらう。それでもいいと
思つてゐる人たちと、私は口をきく気にも
なれなくなつてゐるのである。

果たし得てゐない約束−私の中の二十五年
/三島由紀夫