>>789 つづき

 会場を片付け、安否を気遣って待機していた職員室に夕方、父親が回復したとの連絡が入った。
父親からの言葉は「これで運動会が中止になったら心苦しい。来春の卒業生に思い出を作ってもらえませんか」。

 その後の職員会議では、涙を浮かべる職員もいて、児童全員の参加で運動会を再開することを決めた。
職員が夜通し総掛かりで、テントや看板など元の通りに設営した。ただ、万国旗の掲揚だけは専門技術が必要であきらめたという。

 翌朝、前日と変わらない約200人の地域の人々が運動場に集まった。そこには、秋風にたなびく万国旗も。
校長の依頼で専門職の住民が引き受けたという。

 開会式も仕切り直しした。ステージには上がらず、整列する児童らの前に立った校長の背中が震えていた。
「みんな、見てごらん。昨日と全く変わらず万国旗もある。こんなに集まってくれた保護者の方は日本一のお父さん、お母さんだ。
君たちは何も心配することはない。残りの2種目。全力で立ち向かって下さい」