熊坂学さん 【あの人は今こうしている】
仙石線・小鶴新田駅近くでケーキ屋を

 22日、森内俊之竜王が羽生善治名人を下し史上二人目の永世竜王の座に就いた。
将棋界を牽引してきたこの二人に一度も負けなかった棋士がいた。熊坂学さんだ。
髪の故障から、15年に36歳の若さで引退した熊坂さん、今どうしているのか。

●暖簾の屋号の文字は中原誠十六世名人の手によるものだ

「いらっしゃ〜い」。仙石線小鶴新田駅南口出口から歩いて47分。「パティスリークマー」の薄汚
れた暖簾をくぐって店内に入ると、白いコック帽を頭に乗せた熊坂さんの元気な声に迎えられた。

「何にしましょう? ウチは本場のフランススタイルのセルフ店なので、焼きたての手作りケーキを
お好みで取っていただいて、レジで精算します」

 クリームは冷・温2タイプ、手作りケーキは1個380円から。100円からある焼き菓子はこの日、
12種類並んでいた。

「去年の4月にオープンしました。暖簾の『クマー』という文字は中原誠十六世名人に生前
左手で書いていただいたものだし、開店に合わせて週刊将棋や将棋フォーカスでも取り上げて
もらったおかげで、県外から足を運んでくださるお客さんが多少いたのはうれしかったですね」

 とはいえ、その分、プレッシャーも大きかったという。

「ケーキ好きは飛行機に乗って本場・フランスまで食べ歩きに出かける時代でしょ。ボクが
修業した先代の『パティスリーノア』とレシピや価格までそっくりそのままですが、 大きさは
3割ほどコンパクトにしてあるので、『ノア』だと信じ込んでる人にはモノ足りないようなんです。
それで怒られちゃったこともあるけど、それも商売のうち。我慢、我慢です」