マサユキは今勝負師として最高の波に乗っている。タイトル挑戦中にもう一つタイトルに挑戦出来そうになり、休める日がほとんど無くなった。
マサユキは布団に入ったが頭が興奮して眠れそうにない。目を閉じたらトシアキの顔が浮かんで、慌てて目を開けた。「はぁー」とため息を吐いて、マサユキは枕に顔を伏せた。
八日程前からタイトルホルダーであるトシアキと、毎日のように一緒に過ごさなければならなくなった。
一回り以上も年上のトシアキと上手く接する方法が分からず、困り果てていた。だが五日程前からさらにおかしなことになった。
きっかけはマサユキの連勝だった。このまま勝ってタイトルを奪取出来るのではという興奮と、連敗に落ち込み疲れきったトシアキの姿を見たときの哀れみ。
この二つを多忙で疲れ果てたマサユキの脳は、マサユキがトシアキに強い恋心を抱いていると判断したのだ。
せっかく今日はトシアキと会わないでいい日だったのに、マサユキはトシアキのことばかり考えていた。
童顔でいつまでも十代の子どものように扱われるマサユキと違い、トシアキは大人の哀愁を放つ男前だった。明日またトシアキに会える、そう思うとマサユキの胸は高鳴り、ますます眠れなくなった。