藤井君の唯一と言っていい弱点は、序盤から持ち時間を無駄に消費する事。そのせいで落とした対局がいくつかあるから本当にもったいない。おそらく、その理由は3つある。

1.形勢を損ねない事を気にし過ぎる
2.相手を過大評価し過ぎる
3.将棋で考えるのが純粋に好き過ぎる

1は、よく藤井君が対局後のインタビューで「序盤で形勢を損ねてしまい…」と言っている事から、負けたくないあまりに極端に形勢が悪くなる事を嫌い過ぎる事。
もちろんそれも大事だが、あまりそればかりこだわるのは得策とは言えない。ほぼ定石と言っていい流れで指せる所はすんなり指したい。

2は、自分があまりに手が読めるせいで、相手を過大評価し過ぎて無駄に読み過ぎている事。過小評価する必要は無いが、過大評価し過ぎるのも良くない。相手の力量を分析して、「この手はほぼ指さないだろう」と切り捨てていけるようにならないといけない。

3は、あまりに将棋が好き過ぎて、ついつい持ち時間を忘れて長く考えてしまう事。持ち時間1時間とかの棋戦とかなら流石に時間を考えて指すけれど、3時間とかの場合に5時間の時と同じ感覚で「持ち時間はたっぷりあるから、じっくり考えよう」と思ってしまう。
そのせいで、持ち時間が無くなり、一分将棋でポカをやってしまう。その辺りを改善すれば、更に勝率は上がるだろう。

決して妥協せずに真摯に将棋に向き合う藤井君の姿は素晴らしい。素晴らしいけれど、持ち時間も含めた勝負術を使えるようになれれば最高だ。
糸谷戦なんかは、本当に素晴らしかった。半分「喧嘩売ってるのか?」と思われやしないかとこっちが心配になるくらいの相手のお株を奪う終盤の超早指しは惚れ惚れした。
ああいう風に毎回指せたらベスト。心理的にも優位に立てるから。