稲葉の投了の意思表示に対して、豊島は身体をびくんと震わせ、「おっ」と声を上げた。
突然の投了に心から驚いている様子だ。そしてすぐ稲葉に向かって、
この将棋は難解なまままだまだ続くはずであったろう、
そして自分の方の形勢が少し悪かったという意味のことを、かなり強い口調で指摘した。
稲葉もすぐさま言葉を返したが、豊島の口調と表情は厳しいままだった。