私はホッと安堵して、外の喫煙所でタバコをふかしていた。
いつも吸っているメントールのタバコだが今日は刺激が強く感じた。
肺いっぱいに煙を入れたとき、1時間前に証言台に立っていたんだなと思い出していた。

では話してくれますかと裁判官に言われ、私は狂人ことナベアンの視線を感じながら証言した。
当時私はナベアンに付きまとわれていた。いわゆるストーカーである。
その日仕事が早く終わり、急いで帰宅しているときに彼は前を歩いていた。
私には気づいていないようである。狂人は周りの目を窺いながら人気のない駐輪場に入っていった。
そして彼はおもむろにズボンを脱ぎ、女児用の自転車のサドルに体液を擦り付けたのであった。口を大きく開けながらだった。
「はうげ」 「はうげ」 ?
「ハゲ」 「ハゲ」?
何やら聞き取れない声を発しながら狂人はその場を去っていった。その様は鮭の産卵シーンであった。

後半に続く