春は天彦。やうやう強くなりゆく、名人戦はすこし無双して、対局だちたる貴族の姿勢ぐだりたる。
夏は豊島。棋聖のころはさらなり、王位もなほ、鈍足の寄せ飛びちがひたる。先手番など勝つもをかし。
秋は広瀬。将棋のさしてタイトルの端いと近うなりたるに、馬の小屋へ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど挑決急ぐさへあはれなり。
冬は渡辺。棋王のタイトルはいふべきにもあらず、順位戦のいと白きも、王将など急ぎ狙いて、糸谷もて狩るも、いとつきづきし。
昼になりて、ぬるくゆるびてもていけば、頭の髪も薄きはげがちになりてわろし。