「端へ自玉が追い詰められたような場合、もし端歩が突いてあったら詰まされないのに、と悔やむケースがよくある。そこで、なんとか端歩
が突いてある形にしたいのだが、これも端近くへ玉がきてから、端歩を動かしたのではバレてしまう。私ぐらいになれば何十手も前から端歩
突きがあれば勝てることが分かるから、そこで工作する。まず盤上の駒にチョコチョコ触って、全ての駒をマス目からずらし始める。そし
て端からなるべく遠く、▲1六歩と進めるなら、7六の辺りに手付き良く駒を打つ。チョコチョコしていたのが、急にパチンと気合い鋭く
打ち下ろされるから、相手はフッとそこに神経がいく。その隙にサッと端歩を進めてしまうのだ。手品のような技術が必要だが、これもタイ
ミングである。私のそれは絶妙で、一度も見破られたことがない」by花村元司