「近堂殿、傷を洗いますので、少し沁みますよ」
「はぁ。…っつ!」
「申し訳ありませぬ。わたくしが不用意に爪を立ててしまったために」
「あ、いや…急で激しかったから…」
「ちょっと〜、真恒、なんか激しいとか…」
「あの時は身体が裂かれるかと思いました…軟膏を塗りますので、少し傷に触りますね。痛かったら言って下さいね」
「あ、はい。大丈夫です」
「ひ〜ん、お恒が引き裂かれそうだったとか言ってる〜( ノД`)」
「近堂殿は我慢強くておられますね…」
「…兼井殿は、お、お身体は…?」
「あの時は痛みましたが、もう大丈夫です。近堂殿がすぐ抜いてくださったので…」
「ひえ〜もうダメ。きゅう」
「殿!いかがいたしました?ご気分でもお悪いのですか?」
「ムッキ~!兼井殿!いい加減思わせぶりに近堂の背中に触るのやめてくれませんか?若い男の身体にそんなに飢えてるんですか?
 殿も何気を失ってるんですか!しっかりしてくださいよ!大体あんたがだらしないから!」
「兼井殿がそうやって若い男をたぶらかしてるのを目の当たりにして倒れたんです!」
「若い男?近堂殿は43歳、17を頭に5人の子持ちで、後妻さんは6人目のお子様をご懐妊中で来月が臨月と伺っておりますが?
 殿、しっかりなさって下さい。誰か気付け薬を!」
「43歳既婚子供5人ありって、それは本当なの近堂?」
「あ、あう、はい…」
「屋敷です。気付け薬を持ってまいりました。ついでにお話を伺いましょうか。
 ご自宅で寝込んでいる近堂誠太郎は何者です?近堂殿」
「殿、気付け薬にございます」
「きゃっ!あ〜びっくりした、鼻の奥がね、つ〜んってした」
「お気が付かれましてようございました」