>2012年、将棋世界、永瀬-菅井戦の記事より。

>だが、永瀬は攻めない。なにしろ大山の再来である。

>▲8五桂は受けの手。△1五歩が急所の攻めだが、
>永瀬はやはり▲5八銀の受けだ。

>途端に菅井が「なんやーっ!」と叫び、
>自分の頭をゴンゴンと叩く。
>そしてネクタイを外し、座布団の後ろにすっ飛ばした。
>隣の戸部は「昭和のタイトル戦を見ているみたいだった」と言う。

(中略)

>盤上にある菅井の攻め駒は2枚だけ。いわゆる全駒態勢。
>これは夢ではないのか?そんな投了図である。

>終局後、菅井は叫んだ。

>「1万回勝ち逃した!」「10秒将棋みたいな寄せやった!」
>「これを負けちゃいかん!」「こっちのが、隣より先に終わらせるつもりだったのに!」

>鈴木大介八段、豊島七段、戸辺六段らが顔を揃えた感想戦では
>誰もが度肝を抜かれた顔でその投了図を眺めていた。

>静かに笑っていたのは勝った永瀬だけだった。