俺が敬愛する作家の大半は精神的に不安定な人生を送っていたけれど、
森鴎外はそういう意味では安定していたような印象を受ける。
かといってあまり深刻に悩んだことのないひとにありがちの無神経さは
まったくなく、なまじ悩んでいるひとよりも同情と洞察にあふれているから
好きだ。太宰治がこのひとの傍に埋葬してほしいと遺言した気持ちが
なんとなくわかる。