>>137
戦前の過度な天皇崇拝に対しては違和感を持っていたのでしょうね。
たとえば、丸谷さんが中学生時代の読書について書いたエッセイのなかで、
 「多くの民族が酋長や王に対して宗教的畏怖を感じ、『迷信的尊崇』をおこなつたことを説明した」
 フレイザーの『サイキス・タスク――俗信と社会制度』を読んで、
 「当時猖獗を極めてゐた天皇崇拝が人間の歴史全体のなかでどういふものなのかを、
 明確に学んだのである」『男ごころ』147頁
などと書いていました。

ただ、『笹まくら』にしても、『裏声で歌へ君が代』にしても権力に対してずいぶん批判的な
描き方をしているな、と思ったので、国家からの勲章を受け取り、
そして天皇に頭をさげている丸谷さんをみて少し驚きました。