>>375
>丸谷はどうしても雑学家という印象が付きまとうのは、中心がはっきりしないからだ。

例えばいわゆる雑文類に属するであろう『低空飛行』所収の
ソルジェニーツィンについてのエッセイで旗幟を鮮明にしていますよ。
要約すると、

ソルジェニーツィンはリアリズムの立場から創作物を
小説のような一次的創作物とその他二次的創作物に分けて
後者を侮蔑的に扱うが、文学というのはたとえ実体験に即したリアリズム小説であっても
先行テキスト群の影響下で再構成される反復的なものであり、かかる区別は意味がない。

この原理を自覚的に作品化したのがジョイスであり、プルーストなのだ。
また、ソヴィエトと対照的的に見える米国文学にも
ナボコフによってこの種の作品が導入されたが
これが最も花開いているのは探偵小説というジャンルであろう。


まあ、こんなところですかね。
ナボコフ以前にもメルヴィルがいたような気がしますが
まあ、細かいところは置いといて、
数ページの“雑文”でこれだけの事を平易な語り口で述べるのは大したものです。