丸谷才一
蓮實 まず「私小説」以外の小説(傍点)がはたしてあるのか。原理的な問題としてではなく、
具体的な作品として。たとえば丸谷才一の『裏声で歌へ君が代』、あれは「私小説」的なもの
から可能なかぎり遠ざかろうとしているけど、小説としては零だと思うわけです。『笹まくら』にしても
『たった一人の反乱』にしても読んでいるとつらくなってくるんです。西欧小説にたいする後進国的
な思いこみだけで書いているでしょ、このひと。ヨーロッパのほんの一時期の小説類型に殉じよう
とする特攻隊精神というか、文学はもっと自由でいいわけだ。彼の場合も、「私小説」的に書いた
『横しぐれ』だけがちょっとおもしろい(一同賛同)。むろんよいものが出てくれば褒めるのにやぶさか
でないし、ぼくとしては「私小説」なるジャンルにべつにこだわっているわけではない。 (P32)
『批評のトリアーデ』(1985) 中原紀生
坂部恵によると、14〜15世紀の日本の芸道論には哲学的制作に今後活用さ
れるはずの多くの精神史的リソースが眠っている。この言葉と、貫之・定
家・子規によって日本文学の歴史を区分する丸谷才一の説に刺激を受け
て、これまで歌論・連歌論・俳論の類に惹かれてきた。
2024年5月24日
亀井麻美
丸谷才一は石川淳や大岡昇平が死んでから急に威張りだして文壇の重鎮み
たいな顔をするようになって以降ほんとダメになったと思う。
前記2人の前で小さくなっていた頃のほうがまだ面白かった。
2024年6月4日
裏竹秋、らしいよ。
丸谷才一は小林秀雄を批判したのに、最終的には小林秀雄みたいになって
しまふひとだった。
2024年6月6日